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はる

なまあったかい風が吹いている。
夜、私は家へ急ぐ。


早歩きしている、と、コートの中はじっとり汗ばむ。
思わずコートのすそをかきあわせたくなるようなそんな風から、
思わず全身で受け止めたくなるような風へ。


ああ、冬が終わる と思う。


何か按配間違えちゃったんじゃないかと思うくらい、急にあったかい日が来る。
春の空気がいーっぱいに入った風船、その口を、ちょっとずつ開けて。
少しずつ春を溶かして行く。


あったかい風はしけった風で、
あのしけったなまあったかい風は、心のやわらかいところをそーっと撫でて行く。


何かの予感
形にならない予感
でもきっと悪いことはおきないようなそんな予感
根拠のない予感


軽く軽く軽く軽く


コートを脱ぐように、心にかぶさった色々も脱いで


軽く軽く軽く軽く


なれるようななりたいような
そんな季節
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