東亰異聞
ホラーです。ホラー?んー。怪談話、みたいなホラー。妖怪とか物の怪とか、そういうものが出てくる昔の東京(のような場所)で起こった連続殺人を探って行くお話。
ミステリーの要素も充分、最後はきっちりホラーで締めてくれます。
彼女の書く物語はガツンと本質を突く一言があちこちにちりばめられていてよいです。
去年読んでいまだに覚えている一節。
「闇というのは、何も黒一色の事を言うのではない。白でもなんでも、一点のかげりもなくその色に染まったら、それは闇なのだ」
という。
人間というものは、濁濁した存在であって、だからこその暖かさもあるわけです。
想う気持ち、その気持ちだけで心の中が一色に染まったならば、それはもう人ではない、というような観点で物語が語られます。
俗に言う物の怪や魔、鬼と言った存在と、神や仏といった存在は、人から見たら同じだろうと。
光にも陰りがなかったら、それは闇なのであって。
物語の出来としても秀逸。読み始めたら止まらなくなること請け合いです。
また最後に放たれる台詞が素敵なんだこれが。
夏の夜、こんな本をお供に涼を取ってみるのも一興かと。