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S君編#3

その電話は、突然かかってきた。

「もしもし?」

「もしもし?あ、たいこさんですか?S君の彼女ですよね?」

この人誰?が、最初の感想。なんで彼女?が、次の感想。
どうやら、周りには数人の男子がいるようだ。
話を聞いていくと、どうやらS君の大学の友達らしい。
適当に答えをはぐらかしつつ、相手の状況を探る。

「ふーん。でさ、なんでうちの番号知ってるの?」

「Sのアドレス帳に書いてあったの」

「ああ、そうなんだ。」

「Sがさぁ、俺に彼女が出来たって自慢してるもんだから、 どんな人かと思って電話したの」

「へぇ。で、今S君そこにいるの?」

「いないよ?」

「なんでアドレス帳があるの?」

「いや、ちょっと覗いたの」

「ふぅん、そうなんだ。」

私は、こういう人たちが大嫌い。
少しの想像力もなく、人のことを思いやる気持ちもなく、自分には降りかからないとタカを括っているからこそできる、こういう失礼な事を平気でする人達が、私は大嫌い。

S君が彼らとどういう関係だったのかは知る由もないけれど、そういう人達と付き合いのあるS君自体にも、なんとも言えない複雑な心境を抱いたのは事実である。

彼らは、S君のどこが好きになったんだ?だとか、S君は彼女いない暦=年齢だ、とか、もっともっと胸糞悪くなるような、不必要な情報をを散々しゃべってくれた。

「わかった。わざわざ忠告ありがとう。でもね、私はS君と付き合ってないんだ」

と、私は電話を切った。
(電話の大まかな筋が本当にあんなやつがいいの?というような内容だったため)

A君のこともあったし、S君にも一言言わないと気がすまなかったので、後日電話して確認した。

「あのね、こないだS君のお友達って言う人から、うちに電話がかかってきたんだけど。私とS君が付き合ってると思ってるみたいだけど。いつから付き合ってることになってるんだろ、私たち?」

S君は、友達が私の家にかけて来るということでもすでにかなりの衝撃を受けていたようだが…。

「え?ちがうの?でも、これからも仲良くこうしていけたらいいと思ってるよ」

と返してきた。

「こっちは付き合ってるつもりなかったし。付き合ってもいないのに、彼女って言われても困るんだけど。んで、この際はっきり言うけど、S君とは付き合う気ないから。今、かなり腹立ってるし。そういうことで」

と、電話を切ってしまいました。

今になって思えば、冷たかったかなぁ、対応・・・とも思う。
S君とその友達の関係の背景が見えなかったわけじゃない。
いじめは、する側もされる側もそれなりに経験してきているだけに、20歳過ぎてもそんな中から抜け出せないS君にも腹が立ったんだと思う。
なんにせよ若かった。懐が狭かった、当時の私。

こんな事を考えていた。

お友達が悪いんであって、S君に責任はないのか?
友達を見極められない人は、やっぱりダメだ。

今の私には、それでもそうなってしまう人がいる事を理解するけれど。
当時の私にはそこまで理解する余裕やゆとりや経験はありませんでした。


S君に電話したあとに、A君に電話した私。

失恋の痛手を、笑いで吹っ飛ばしてくれた彼らには、彼らには申し訳ないが、私には救いになった。

ひとつ心残りは、S君、もしかしたら女性不振に…なっていやしないだろうか…ということ。

本当に、S君にも。幸せになっていて欲しいなと、心から思う。
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