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S君編#2

さてさて、このS君と、どういういきさつだったかクリスマスに一緒に飲みに行くことになった。
夏に失恋し彼氏もいない私には、クリスマスなんて頭の中になく、クリスマスって気づいたのが約束した後だったりしたのだ。
クリスマスイブ当日。
待ち合わせして向かった先は、北の家族。

当時、私は19歳。
店から流れる演歌。
客はいい感じに年季の入った人生に疲れたひとたち。
今宵、世間はクリスマスイブ。
渋すぎないか。この状況。

しばらく飲んで、お店を出たのが8時頃。
S君が突然言った。

「甘いものが食べたい」

そのまま、当時よく夜を明かした24時間喫茶店へ。
S君、誘っておいて「僕何もわからない」と、私に店選びまで任せきり。
S君の甘いものが食べたい要求に答えるべくものすごいリードして池袋の街を歩く。
もう、早く帰りたい一心の私。

そしてS君は、「甘いものが食べたい」という宣言のとおり、チョコパフェを頼んだ。
彼はそのチョコパフェを本当に幸せそうに食べていた。
向かいの席で私はコーヒーを飲んでいた。
そのあと、さっさと会計を済ませ、
さようならしたのは夜の9時。


この間、私とS君は何を話していたか。

S君は苦学生だった。
新聞配りながら大学へ通っていた。
飲んでいる間も、チョコパフェを横目にコーヒー飲んでいる間も、私はS君の新聞を配る苦労話を聞いていた。

私自身、誰かといないと寂しくてしょうがないという精神状態だった時期。
さらにこの人のキャラの面白さに負けて付き合い続けたのは、確かに彼に申し訳ないとは思うのだが…。

この日の最後に、映画に誘われた。

1月1日。

初詣と映画というお誘いだった。

…はい。お誘いを受けたのです。私。

観にいく映画は「DEAD MAN

元旦、待ち合わせは有楽町。
S君川越在住。私はS君の都合なんかまるで考えずに、「映画館は有楽町でしょう!」と有楽町を指定。

純粋にこの映画が観たかっただけ。
正直、正月から観るような映画じゃない。ましてやデート。

映画を観終え、ブルーな気分(映画の余韻)になりながら初詣へ。

電車で移動。

電車の中でのS君の話題
「僕には貯金が300万ある」
確かに、苦学生で300万も貯金するのは大変だろう。
大学生、貯金する間に少しは遊べ!
などと色々な思考が脳裏をよぎる。
私は、私には到底出来ないことをする人は素直に尊敬するので、S君の貯金能力には素直に尊敬したりしていた。

そして神社へ到着。

当然のことながら、夜店でにぎわっている。

夜店で、にぎわっている

夜店には目もくれず、さっさとお参りしたS君。

え、お店見ないの?と心の中で思いつつ、とにかくわき目も振らずに歩くS君と私。

結局、ひとつのお店も覗くことなく、どこかでお茶することもなく、
S君は帰ってゆきました。

時間は…4時…

こういうのを健全なデートっていうのだろうか。

映画観られただけで満足満足。それでいいや。

客観的に見たら、これってタダの友達である。
でも、S君の話の内容を考えると、友達…っていうのも微妙なような…

というあいまいな状況はこの時点でも延々と続いていた。
私は面倒なので、「友達」として付き合っていた。ところが。

S君の気持ちは、思わぬところで私に伝わるのであった。
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