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出口

私は誰でしょう
街の中にひとりぼんやりと
夕日に向かって立っています
目に映るはしっこでは沢山の人たちが行き来しています
それはそれはせわしなく
私の視界の真ん中にあるのは夕日で
私は私に私は誰でしょうと
一体誰なんだろうと問い続けています
夕日は、ただ赤く、低く私を照らし続けています
私は誰なんだろう
その答えは、永久に見つかりそうにもありません、
かのように思えました


私は私である


言い切れるその日まで
しばらく私は独りで
夕日に向かって建ちつづけていました


私は私である


その答えを見つけたのは
はっきり言ってしまえば私自身
そんな問いなどもうとうに問い飽きた頃
まるでずっと探していたものが
          とてもありきたりなところから出てくるような意外さと
少し間抜けな空気の中に、ひょいと顔を出しました
その答えのすぐ後ろに、あなたがいました
あなたは
「おまえはおまえだよ、ずっと僕の側にいるおまえなんだよ」
と言いました
あなたは私のまっくらの中で、ぽっ とついた豆電球のようでした
しかし、ほんとうに光っていたのは


私は私である


その答えだったようです
あなたは
「私は私である」うえのあなただったのです


街の人がせわしなく動いています
そのなかで、
私もあなたもせわしなく動いています
せわしなく動きながら
「私は私である」うえの私は月に向かって問いかけます


「私は幸せかな?」
あるいは
「満たされているかな?」
その答えは、今は永久にみつかりそうもありませんが、
あなたとせわしなく動いているうちに
まるでひょいと見つかるものでしょう きっと


その時にあなたが、
やっぱり側にいてくれるひとだといいな、
と、ふと思ってしまうのです
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