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自分の中身を覗いてみた

トラウマを発見した日の話。
私の今のこの体の不調がなんなのか、わからなくて、でも少なくとも精神的なものだとは分かっていて、考えていた。

何故なら、ここまでおかしくなる理由がわからないから。
ちょっと、異常なのだ。
そりゃ、ショックな出来事があったのは認めるし、それで食らったダメージもそれなりに大きいのも理解している。
けれど、ちょっとご飯が食べられないとか、なんかそれを超えてる感じがするのだ。

外出する時に吐き気なんて、産まれてはじめてだ。
ショックで落ち込んでいるなら、それなりの理由があるはずで、少なからず自覚のあるものでしょう?

でも、なぜ自分がそこまで参ってるのか、その理由が分からなかった。

だから、表面上はとっても穏やかです。
ただご飯が食べられないのと、ただ吐き気がするだけ。

あと、眠れない。

ま、これは解決する気がします。
寝なかったら死にますから。ええ。
ご飯はそんなにすぐ死にませんから。

さて、親友にナビされながら、自分の心の中を探って行った。
突き当たったのは、最初の失恋の時に味わった、巨大な絶望感だった。
嫌いになって、顔も見たくないと思って別れる恋愛って、そんなに多くはないよね。

私の文章の中にも何度も出てくる私の初恋は、元親友だった。

お互いの事がとってもよく分かった。一緒にいて空気みたいだった。
私たちは、確実に、一番近い距離にいた人間だった。

その彼には彼女がいた。彼女と別れた後、私たちが付き合うことになるのは、至極当然のように思えた。

異性間の親友は、タイミングときっかけで、いつでも恋人になりうる。
だって、人としてすでに愛し合っているのだから。

そこまで仲のよい時代を過ごしていたから、お互いにとって、お互いはかけがえのない人物だった。
けれど、ある日突然、壁が出来た。
考えている事も何もかも、分からなくなってしまった。
私から、目を逸らした瞬間。なのだ。

相手が悪いのでも、私が悪いのでもない。
ただ、私の気持ちの進み具合が、あまりに急だっただけのこと。
私を抱え切れなくなった彼は、つぶれてしまったのかな。その辺は、もう今の私には分からない。
彼の本心は、分からない。

けれど、彼が自分の殻の中に閉じこもって、私を締め出した事だけは分かっていた。
どうしてそうなったのかも、分からなかった。

そして、ある日。

彼から電話が来た。
いつもなら掛かってこないような時間に。
これから仕事に行く、という時間に。(彼は夜と朝仕事をしていた)

「どうしよう。俺、前の彼女の事が、忘れられないみたいだ」

と、彼は言った。
嘘なのは分かっていた。
けれど、そう言い張る彼に、私が言える事はなかった。
だって、彼の中から閉め出されてしまったのだから。

「どうしたらいい?」

と、聞く彼に、

「だったら、一旦お友達に戻るしか、ないんじゃないの?」

と、私は答えた。
一旦、と言う言葉を、流してほしくなかった。私の、必死の、抵抗だった。

でも、私は彼の事を本気で愛していた。
彼が幸せになるために、私には何が出来るのだろうと、そんな事ばかり考えていた。
体が弱かったんですね。生まれつきの病気を持っていた。

睡眠不足や、過度の疲労は病気の大敵だった。なのに、彼は体を痛めつけるような事ばかりしていた。
徹夜の次の日、顔がパンパンにむくんでいる事があった。

「おしっこ真っ黒ー」

って笑っていた。

私は、どうしたらいいだろうとずっと考えていた。
今なら、そういう行動をとる彼の気持ち、分かるんだけれど。
当時は18歳だった。分からなかった。

心の強さも脆さも、全部が自分基準だった。

そして、私の強さに、彼が折れた。

私から、逃げた。

でも、心の反面では、私はそれでもよき理解者だったのだ。
東京で、唯一の。

地方から東京にやってきて、夢を叶えるために東京にやってきて、
ずっと一緒だった、傍にいた、理解者を手放すこと。
望んでいたはずがないのだ。

けれど、それは恋愛対象ではなく、という話。

ここが難しいね。どれだけ合っている人とでも、タイミングがずれたら、
それは壊れてしまう。から。


私たちは、ほんの一点、(多分一点)が合わなかった。
けれどそれは、恋愛する上では決定的な一点だった。

何がなんだか分からないまま、私たちは別れた。

あの時の事を思い出すと、今でも怖くなるくらい、二度と経験したくない痛みだった。
そして、私は求めた。求めて求めて求めて、彼を求めた。

結局、どれだけ求めても、どれだけお互いがお互いを必要としていたとしても、
心の壁一枚でダメになってしまう。たった一点で、ダメになってしまう。
そういうこともある、と言う事を学んだ。

上手に諦める方法を身につけた。

今考えても、長い長い1年だった。

その1年の間に、私はおそらく多くの事を学んだ。

黒い雲が晴れた頃、私は一気に多くを学んだと言うことを理解した。

そして、今まで気づかなかった、恐怖も学んだ。
私は、怖い。

どれだけ気持ちが近くにあっても、そんなこととは関係なしに、お別れしなきゃならないことがある事を知っているから。

そのときの痛みが半端ではないことも。

彼も相当痛い思いをしていたはずで、私は別れた後で、彼をめっためたに傷つける結果になってしまった。
好きだから幸せになってほしいと思う反面、心で私を求めている、その声が聞こえていたから。あるいは、聞こえている気がしていたから。

気持ちがどうであれ、もう、一緒に歩いていく気はないんだと決めたら、
振るほうは、意地でも世界一の幸せ者を装わなきゃいけないってこと。

一瞬で、天国から地獄に落ちた、あの衝撃と痛みを、そして、一度扉を閉じられてしまったら、どれだけがんばっても、声が届かないと言う事と、

・・・みんな、嘘をついてはなれて行くと言う事と。

どの恋愛も。

振られて終わった恋愛の、相手の言い分は、

「前の彼女が忘れられないんだ」

あるいは、

「昔の彼女の面影を求めているんだ」

納得できなくても、納得しなきゃいけない、最強の断り文句で。
私は何も言えなくなる。

こんな恐怖で、自分がやられてること自体、今の相手に失礼だなと思うんですけれど。
この辺はどうも理屈ではないみたいで、どうにもならないようです。
覆してくれるの、信じてるよ。

こんなつまらない過去、覆せるって信じてるよ。

私にあと一歩の勇気を。

こんな恐怖に打ち勝つ、勇気を。

これだけ諦めないで、食いついてる自分をまずは褒めてあげたい。
よくやってるって褒めてあげたい。
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