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東の海神 西の滄海


小野 不由美 / 講談社(1994/06)
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等価交換、という言葉が頻繁に出てくるのは鋼の錬金術師ですね。
自分に益をもたらすからこそ、そのものに何かを託したりあげたりするわけです。
この、やりとりのどちらかが傾いてもうまく行かない。

前作「月の影 影の海」の最後で陽子を助ける延の国の王様と麒麟が即位して間もない頃のお話。
2人ともが陽子と同じように、胎果(本来は十二国で生まれるはずだったものが手違いで日本で産まれてしまった人の事)の出。
延の麒麟、六太は戦乱のさなか、口減らしのために山に捨てられたところを発見されて保護される。

延の王様、尚隆は小さな国の領主の息子。

人が飢え、死に、大変な思いをする戦争を憎む六太。
自らが王を選び仕える立場でありながら、何よりも王という存在を嫌悪している六太。

一方の尚隆は日本でも領主、すなわち一国の王子様として生まれて育っている。
王というものを、本当に嫌というほど理解している人なのですね。
この、延の王様のキャラクターが素晴らしい。
腹を括る事を知っている人。
王の目線で全ての物事を観、吟味することの出来る人。
王様って偉いのだけれど、偉いには偉いなりの理由がある。
王様は国のために、国の民のためにいろいろなことをする人だから偉いんだな。
何事も、なんの意味もないけれど偉い、なんて人はいない。

敬われるにはそれだけの理由がある。
一番に優先するべきが何かがわかっていて、それを成し遂げるためには手段を選ばない、本当にかっこいい王様ですねぇ。

戦争というものが、麒麟の本性とはまた別のところでトラウマになっていて、王という存在を信用することが出来ない六太とその主である王様の絆のきっかけのようなお話。

本当に偉い人ってさ、きっと偉ぶることなんてしないんだよ。
それでもやることはやるから偉いんだ。

ストーリーもよく出来ています。
悪役である斡由のキャラも素晴らしい。
斡由のキャラクタに重ね合わせることの出来る人物って結構たくさんいるような気がするのね。今の日本の偉い人の中に。

尚隆のようなキャラクタに重ね合わせることの出来る有名人、私はいまだに観たことがない。
父性の強い、強くて優しい王様なのですね。

こういう人間がリーダーになったら、きっとましな世の中になるのじゃないかな。

六太と信頼関係をきっちり結ぶ様は感動的。
こんな強固な信頼関係、築いてみたいものです。
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