月の影 影の海〈上・下〉
小野不由美の代表作となったシリーズ。
一般文庫からも発売されています。
更にアニメ化もしていてオンラインゲームもあったりします。
■ 月の影 影の海〈上〉十二国記
■ 月の影 影の海〈下〉十二国記
いわゆる「優等生」の女子高生、中島陽子。
学校にはいじめがあり、そのいじめを快く思わないながらも、いじめが自分にまで及ぶ事を恐れ、それを正す事も出来ない。
優等生というより、「手のかからない子」。
周囲の顔色をうかがって生活する、自分というものがどこにもない。
ある日突然、学校に「ケイキ」と名乗る金髪の男性が現れる。おかしな怪獣のようなものと共に。
半ば拉致気味に「ケイキ」に見知らぬ世界に連れてこられるが、連れてこられる途中で「ケイキ」とはぐれて何もわからない陽子は、一人で見知らぬ世界を旅することになるという話。
上下巻だけれど、上巻はずっと一人旅。
主人公の陽子には何一つわかることがなく、それは読者である私たちも同じ。
読者ともどもよく解らない、けれど非常に危険な世界に放り込まれてしまう。
後半でぱたぱたとその謎が解けていくのだけれど・・・
生きることに真剣にならなくても生きていける暮らしを私たちはしている。
ただなんとなく生きていても飢えることはない。
そのことに焦燥感を持っても、それは時代のせいだったり誰かのせいだったり、そうやって言い訳をする余裕がある暮らしをしている。
さて、生きるか死ぬかの極限の旅を続けるうち、陽子はそういう自分の甘さに気づいていく。
数々の裏切りに遭って、彼女は信じなければ騙されないと考える。
しかし困ったことに、信じないと誰かに助けてもらえないんだな。
信じて裏切られるのは、自分の考える軸が信じる相手にあるから。
裏切られるってどういうことだろう。
それは、もしかしたら自分の勝手な思い込みなのかもしれない。
気持ちが通じるってどういうことだろう。
自分が思っていることが、寸分の狂いもなく相手に伝わるなんてことがあるのかしら。
あったとして、それを確かめる術ってないのじゃないかしら。
旅の途中、ぼろぼろになった陽子に手を差し伸べたのは、いわゆる「被差別者」であるネズミの半獣、楽俊。
彼はとても賢い。そしてよい方向にその脳みそを使っている。
彼は陽子を信じる。
陽子はしかし、彼を信じない。
ネズミは言う。信じる信じないは信じる側の話であって、その対象とは何の関係もない。
たとえそれで裏切られようと、それはそういうものを信じた自分の責任であって、その対象のせいじゃない。だから、その対象を恨むなんて事はしない。
彼はまず、何より自分を信じている。
だから失敗しても反省が出来る。
物語の中で、「お前はお前の王になれている。」という言葉が出てくるのだけれど、まさにこの言葉が自分を信じるということなのだろうな。
自分を信じて自分を中心とした軸をしっかりと持つこと。
誰もが自分自身の王であること。
終盤、そういうことに気づいた陽子に待っているのは数々の種明かし。
読者にとっても種明かし。
ここで物語が全て繋がる感じがとても心地よい。
読み始めたら一気に最後まで読んでしまう、そして続編を手にとってしまう、
素敵な小説です。
一般文庫からも発売されています。
更にアニメ化もしていてオンラインゲームもあったりします。
■ 月の影 影の海〈上〉十二国記
■ 月の影 影の海〈下〉十二国記
いわゆる「優等生」の女子高生、中島陽子。
学校にはいじめがあり、そのいじめを快く思わないながらも、いじめが自分にまで及ぶ事を恐れ、それを正す事も出来ない。
優等生というより、「手のかからない子」。
周囲の顔色をうかがって生活する、自分というものがどこにもない。
ある日突然、学校に「ケイキ」と名乗る金髪の男性が現れる。おかしな怪獣のようなものと共に。
半ば拉致気味に「ケイキ」に見知らぬ世界に連れてこられるが、連れてこられる途中で「ケイキ」とはぐれて何もわからない陽子は、一人で見知らぬ世界を旅することになるという話。
上下巻だけれど、上巻はずっと一人旅。
主人公の陽子には何一つわかることがなく、それは読者である私たちも同じ。
読者ともどもよく解らない、けれど非常に危険な世界に放り込まれてしまう。
後半でぱたぱたとその謎が解けていくのだけれど・・・
生きることに真剣にならなくても生きていける暮らしを私たちはしている。
ただなんとなく生きていても飢えることはない。
そのことに焦燥感を持っても、それは時代のせいだったり誰かのせいだったり、そうやって言い訳をする余裕がある暮らしをしている。
さて、生きるか死ぬかの極限の旅を続けるうち、陽子はそういう自分の甘さに気づいていく。
数々の裏切りに遭って、彼女は信じなければ騙されないと考える。
しかし困ったことに、信じないと誰かに助けてもらえないんだな。
信じて裏切られるのは、自分の考える軸が信じる相手にあるから。
裏切られるってどういうことだろう。
それは、もしかしたら自分の勝手な思い込みなのかもしれない。
気持ちが通じるってどういうことだろう。
自分が思っていることが、寸分の狂いもなく相手に伝わるなんてことがあるのかしら。
あったとして、それを確かめる術ってないのじゃないかしら。
旅の途中、ぼろぼろになった陽子に手を差し伸べたのは、いわゆる「被差別者」であるネズミの半獣、楽俊。
彼はとても賢い。そしてよい方向にその脳みそを使っている。
彼は陽子を信じる。
陽子はしかし、彼を信じない。
ネズミは言う。信じる信じないは信じる側の話であって、その対象とは何の関係もない。
たとえそれで裏切られようと、それはそういうものを信じた自分の責任であって、その対象のせいじゃない。だから、その対象を恨むなんて事はしない。
彼はまず、何より自分を信じている。
だから失敗しても反省が出来る。
物語の中で、「お前はお前の王になれている。」という言葉が出てくるのだけれど、まさにこの言葉が自分を信じるということなのだろうな。
自分を信じて自分を中心とした軸をしっかりと持つこと。
誰もが自分自身の王であること。
終盤、そういうことに気づいた陽子に待っているのは数々の種明かし。
読者にとっても種明かし。
ここで物語が全て繋がる感じがとても心地よい。
読み始めたら一気に最後まで読んでしまう、そして続編を手にとってしまう、
素敵な小説です。