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幼な子われらに生まれ


重松 清 / 幻冬舎(1999/07)
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個人的にひどく痛い話でした。


簡単に言ってしまうと、ステップファミリーのありかたのお話し。
再婚同士、お互い前の配偶者との間に子供をもうけている。
お互い、親権は母親が。


なので、再婚した「私」は、妻の連れ子との4人家族を持っている。


結婚して、子供をつくって、離婚して、また新たに家族をつくる。
おのずと家庭の中は複雑怪奇になってゆく。


一緒に暮らす、血の繋がらない「我が子」
離れて暮らす、血の繋がった「我が子」
新たに生まれる、血の繋がった「我が子」


再婚をしても、主人公は血の繋がった我が子と会っている。
妻が妊娠したことをきっかけにして、自分の心の中のそれぞれの子の位置を再確認しはじめる。


つまづいたり、逃げたり、だめになりかけながらも、最後はきっちりと現実を見つめてゆく。
見えないものに蓋をして、形だけの家族をつくっていても。
(そしてそれは、家族に限らずどのような人間関係でもそうだと思うのだけれど)
やっぱりいつか、どこからか綻びはじめるもので、いつかは向き合わないと続かないもので。


私自身、シングルマザーで子供が3人。
再婚するってなったら、相手の人はどう感じてどう思うんだろう、って思ったり。
更に言うと、今は密接に会っている(毎週末)子供と実の父親と、新しく登場する父親の関係と。


ややこしいことは確実ですね。


でもね?複雑に考えすぎなんだよね。
大人は、きっと、物事を複雑に考えすぎて、逃げ道を作る。
本当はとってもとっても簡単な答えがあるのに、その答えをみつけたくないから遠回りする。


単純な話。


実の子は実の子。血の繋がりは消せない。
そういう繋がりを絶とうとしてもそれは無理な話。
連れ子は連れ子。連れ子と実の子を比べること自体ナンセンス。
だって、その連れ子にも血の繋がった父親はいるのだから。


そういう、歴然とある事実を並べて、包み隠さず逃げずに並べて、
では、父親の立場の主張はどうなのか。どうしたいのか。
母親の立場からはどうしたいのか。どうなのか。
子供は?どう思うの?
そんな事を、遠慮をせずに話し合えばいいんだと思う。


主人公夫婦は、子供にとりあえず隠したがる。
まだ小さいから 飲み込めないだろうから ショックをあたえたくないだろうから。


そうではない。子供だって事実をちゃんと知る権利がある。


そのひずみを全部背負っちゃった長女の描写がとても悲しい。


こうして意見を言うのは簡単。でも、現実問題として身につまされるこの手の話、実際に私が直面したらどう対処するんだろうな。
でも、うまくやっていけないことはないんだよ。
ぜったいにね。


最後は、そんな感じで終わる。


なぁんだ、やっぱりこうするのが一番近道だったんじゃないー。って。
でも、やり直しはいつのタイミングだって効く。
だから、いい。


気づいて、やり直そうと思った時点で、それは手遅れではない。



そう信じたい。
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