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A君編 #4

次の月、また飲みに行く機会があった。
実は、私はその月に自分の劇団の公演を控えていて、かなり忙しかった。

ところが話の流れで、自分の劇団の公演日の一週間後「詩の朗読会」にうちの劇団員何人か出して軽い芝居をするという約束をしてしまっていたのだ。
その打ち合わせがてらの飲み会だった。

深夜2時3時という時間、いい感じで酔っ払った私は、A君にこういった。

「君はね、私のことが好きだ好きだって言ってるけど、私と知り合って、私の何を知ってるの?所詮、あなたの気持ちなんてね、私のことがが好きだって思ってる、その状態が好きなだけなんだよ。そんなのを本気で好きだなんて言ってほしくないね。私に対しても失礼だよっ!」

酒の勢いとは、恐ろしいものである。

A君は真剣に凹んでいた。
実はその頃、私は夏に失恋した痛手を負いまくっていた時期であった。
2月の公演なぞ、その別れた彼氏へのあてつけのような脚本を書き、稽古のたびに緊張が走るような、そんな状態だった。タイミングも悪かったんだ、A君よ・・・・・・。

ともあれ、言ってしまったことは言ってしまったこと。さすがに、あそこまで言ったら懲りるだろうとたかをくくっていた私。
しかし、それは甘かったのだ。


ある日、A君から手紙が届いた。
事務用の薄い茶封筒。宛て名は鉛筆書き。

「こないだ栗が言ったこと、真剣に考えてみました。
でも、やっぱりこの気持ちは本気だと思う。だから、付き合ってくれ」

というような内容でした。(もちろん中身も鉛筆)

そして、使用済みの切手が同封されていた。
使用済みの、外国の切手。

当時同居していた親戚の叔父さんによると、どうやらロシアの切手らしいとのこと。


全く意図の見えない切手と手紙の関係性。衝撃的だった。

ロシアと鉛筆の衝撃を残しつつ、私は、

「こいつは一筋縄じゃ離れない…」

と覚悟したのであった。
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