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半分のおしつけ

私は十代の頃、電話が大好きだった。
電話というよりも、留守番電話。

付き合っている人に、わざわざ留守の時間を見計らって、
留守番電話に言いたい事を録音したりしていた。

同じ理由で手紙も好きだったが、手紙は出すのが面倒なのと、
返りが遅いという理由で気軽には出せないものだった。

それでも置手紙やら、何やらと手紙もよく書いた。

今で置き換えるなら、メールみたいなものだろうか。

この間、「メールだと言いたい事を書いてくるのに」
と言われて、その事を思い出した。

会って実際に話しても、伝えようと思った事の半分も伝わらない。
というか言えない。
相手の言わんとする事を飲み込むまでの時間と、
新たに考える事が出来てきた時に、考えがまとまらないのと、
言うタイミングを逃してしまうのと…と、まあ色々と理由はある。

なぜこんなに留守電やらメールやら置手紙がいいのかと言うと。
半分のおしつけだからだ。

チャットでも、実際に会って話をしているのでも、
その時に出た言葉が、正確でないと思ったり、
ああ、もっとこういう風に伝えたかった、と思ったり。
あとはその場で反応されるのが怖くて言えない事だったり。

その複雑な考えをまとめて整理しつつ、相手の反応を見ることなく、
言いたい事をどーんと言ってしまえるのは、やっぱりメールであったり
留守電であったりするわけだ。

言いたい、でも言うのが怖い、どうしようどうしようと迷って悩む。
でもいいたいから書く。考える。
メールも手紙も、「えいっ」と思いきって出してしまえば。
思いきって送信ボタンを押してしまえば。

もう、私にはどうすることも出来ない。
向こうもどうする事も出来ない。

「えいっ」の裏に、私の本音が隠れている。


…。自分で言う。ああ、なんて可愛いのかしら。
なんていじらしいのかしら。

ここまで勢いをつけないと本音が言えない自分もどうかと思うが。
へなちょこなりに結構必死でがんばっている、ということである。

そう、もうひとつ。

私がその場で言いたい事を言えない理由。

私の言葉は、時としてとんでもない凶器になるということ。
時々、思って口にした言葉が、相手を再起不能なほど痛めつけるということ。

言われた方も相当ダメージを食らうだろうが、(なんせ再起不能)
正直、思わず言ってしまったこちらも、相当なダメージを食らう。

それを言ったらおしまいよ、という言葉が出てきてしまうのだ。
しかも大抵そういう言葉って、そのものの本質を突いている事が多い。
フォローの入れようのない言葉だったりするのだ。

過去にそれで、何人の人を傷つけたか。

それで私は、思った事をぱっと口に出すのをやめたのだ。

人を傷つけたくない。私の言葉で。
人を傷つける事で、自分も傷つきたくない。
常にそう思っている結果がこれなんだろう。

そんなわけで、今日もせっせとメールを送る私なのであった。
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