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ハンバーグと牛乳

くるくるぴったんこねこねこねこね
ぎゅうぎゅうぐにぐに。

んー。気持ちいい。こねこね。

私はんばーぐ。ハンバーグのたね。
こねこねされて私はばらばらからひとつの塊になる
くるくるくるくる
ぽてん。

ああん。いや。そんなにばらばらにしないで。

ひとつだった私はぐにゅっむにゅって、またばらばらになる。
小さな塊、ひとつふたつみっつよっつ

はんばーぐのたね。

ぐいぐいぺちぺち ぺちぺち

そんなに強く叩くと壊れちゃう。もっとやさしく叩いてよ。
ふぅ、ひと段落。

私はんばーぐ。まだたね。
らっぷにくるんとくるまれて、冷蔵庫にポイってされたたね。

パタン。

冷蔵庫は扉が閉まると真っ暗。暗いし、寒いし、何も見えない。
ラップにくるまれてるから、本当によくわからない。でもね、私ははんばーぐのたねだから。
らっぷがないとカラカラになっちゃう、まだぐにぐにの、たね。

「そこにいるのはだあれ?懐かしい気がする。」

そこにいるのはミルクさん。牛乳の、1リットルパックだ。
知ってる。私の中にもいる。牛乳さん。ほんのちょっとだけ、いる、牛乳さん。

     「しってるよ。僕がそこにいる。僕は牛乳。スーパーの大安売りで買われてきた、1りっとる118円の牛乳。大変お買い得な、ウシのお乳さ。」

     「ねえ君はそれ以外にもなつかしいにおいがするね。」

「そう。私の中にはウシがたくさん。」

私のおおまかなところはウシでできてる。ウシのお肉。

もともと私のおおまかなところはウシだった。モーモーって、鳴く、泣く、ウシ。
ある日ウシはバラバラになった。バラバラにポロポロにミンチになった。
それが私のおおまかなところ。

「ばらばらがぐるぐるひとつにまとまって、色々なものがあわさって、わたしはハンバーグになったの。お塩さんがぐるぐるぐるぐるひとつにまとめてくれたの。不思議な力を持ったお塩さん。ぐるぐるこねこねされるのはほんとうにきもちがよかったのよ。ひとつになるのはとてもきもちがいいのね。ばらばらはちょっと、かなしかったな。」

     「ぼくだって、わずかばかり君をひとつにするのに協力したんだぜ。」

「いっそのこと、牛乳さんのスープの中に浮かんでいられればよかったかもね。」

     「でも君はいまやはんばーぐだ。ほんのわずか、僕もまじっている。」

「そう。混じっている。ぐるぐるぐるぐるひとつになって、次は焼かれて私は何といっしょになるのだろう?」

     「けんじくんはね、牛乳もハンバーグも大好きなんだよ。だけどお肉がたべられないんだ。ハンバーグでしかね。きっと、きみはけんじくんといっしょになる。ハンバーグの君の一部が僕のように。けんじくんの一部が君になる。そして僕もけんじくんの一部になるんだ。きっときょうの夕飯には、コップに入ったぼくと、君が並ぶよ。」

「じゃあ、またいっしょになれるんだね。」

     「うん。なれるよ。」

「また、あえるんだね。」

     「またあえるよ。でも、次にあうときはぼくたちはぼくたちのことがわからないかもしれないね。」

「そうだね。でも、いっしょになれることがわかってるいまがあってよかった。ぎゅうにゅうさん、ありがとう。」

     「ありがとうはんばーぐさん。そしてぼくのいちぶ。待っててね。」
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