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ずっと続く問答

「私は私だけは貴方のことをすべて理解したい。
貴方はこういうものを中心に持ってるんだよね。私には分かる」

などと思っていた時代もありました。

「他人のことなど理解出来るはずもない。けれど理解し続けようという姿勢は大事だ。」

などと言いつつ、やっぱり全部理解したい願望があった時代がありました。
それは受動的な支配欲なのだよね。すべてを理解した上で受け入れるという支配。

「願望と現実の境目が分かってればいいじゃない」

と思ってた事もありました。
でもこれも違うな。その考え方はとても不安定。いつ現実を見失う状況になるかが分からない。根っこがないから。知らない間に現実を見失う可能性って、特に恋愛においては低くないことだと思う。

理解したい、受け入れたい願望は、裏を返せば理解して欲しい、受け入れて欲しいという願望に変わる。
腹の底にそんな願望を隠し持ち、表向きでは献身するんだなぁ。


今の彼氏のお話を少し。
彼には理解されたい欲がない。
むしろその逆で、自分の中心部には誰も入れない。誰にも見せないと心に誓っている節がある。
その部分で「でも理解されたい」と思うことがない。

そういう方向で強い人なんだな、おそらく。

それをそれで受け入れてしまって、付き合っていて、しかもその感覚がとても楽だと感じている最近の私。
なぜだろう。

おそらく、隠れていた「理解されたい受け入れられたい」願望が満たされてるからなんじゃあないかなと。

「なんだっていいんだ。全部受け入れるよ」が、前提で私の傍にいて、実際それが見えるから安心しているのでしょう。

この「なんだっていい」はすごいな。
こういう事を本気で言い切れる人に私はきっと初めて出会ったんだと思う。

そこで全信頼を乗せたうえで、彼は私に色々な話をする。
それは大抵私に関する話で、たまにまったく理解出来なかったりする。
理解出来ないと不安になるので、一生懸命理解しようとする。
その過程で、私は彼に色々な質問をぶつける。こういう話だよね?こういうことだよね?と、彼に確認を取りながら。

言葉にしづらいものは、誤解なく伝える事がとても難しい。
私の出した回答に対して、彼はまた言葉を継ぐ。
私はそれを聞いて更なる回答を出す。
彼はまたそれに言葉を継ぐ。


こういう繰り返しが延々と繰り返されている。
これはたまに彼に関したことだったりもする。
それ以外に関する彼の意見だったりもする。


こんなことを繰り返していて、知らず知らずのうちに私が変わったのでしょう。

今、私は彼のすべてを知ろうとは思わない。
けれど、彼が発することは、できるだけ誤解のないように受け止めたいと思っている。

やっぱり何かが変わったんだなぁと思う。

昔は「この人はきっとこういうことが言いたいのだろうと私は思うのだけれど、怖くて聞けない」という状況が(恋愛においては頻繁に)あったのだけれどね。

今はためらいなく聞ける気がする。そして聞いている気がする。
そのずっと続く問答こそが、これから長い関係を続けていく前提の人とは必要不可欠なんだろうなと思う。

同意、同調、同情。

それよりも、その相手が発している何か。伝えたい何か。
それを自分の中で受け入れることが大切。
自分がその内容に同意できるか出来ないかは問題ではなく、そういうことを発しているこの人を、たとえ何が出てきたとしても受け入れて信じるということが大事。


おそらく彼がそうして私を愛しているように。
私もそうして愛するようになるのでしょう。

徐々に徐々に。



理解はその結果ついてくるものなのかもしれないなぁ。
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