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髑髏城の七人 season鳥 2017-07-19

ごきげんよう、たいこです。
前回の更新から時間がたちすぎている。下書きにしたままの日記はそれなりにあるのですが(笑)。

と、この記事書いたのは6月30日だったりして。バタバタでUP忘れていたよ。


前回の更新も今回の更新も髑髏城!っていう。そんなわけで、髑髏城の鳥に行ってきました。メインキャストが、阿部サダヲ、森山未來、早乙女太一、という、これ観ないでどうするのーという……!

捨之介は若者の印象があったので、阿部サダヲが捨之介ってどんな感じになるんだろうーと、全然想像ついていなかったのですが、登場からすごかったです。まさかそう来たかと。

森山未來の天魔王を観るのはこれで二度目。あの禍々しい鎧に仮面をつけた異質な姿、
それに見合った立ち居振る舞い、存在感。あとマント。ちょうかっこいいマント。

早乙女太一の蘭兵衛も二度目。初回に観た時、まだ彼の存在を知らなかったのですが、一番強烈に印象に残った俳優さんでした。あんなに色っぽくてかっこいい殺陣を見たのは初めてで、そのかっこよさにため息が出るなんて経験もあれが初めてだった気がします。
あとで19歳だったと聞いて2度びっくりしたのですが。今回実は、彼の蘭兵衛をもう一度観るのが最大の目的の一つだったりしました。

今回はなんと前から4列目の中央という、一生分の運使い果たしたか!という良席でございました。

お話は再演なので大筋は変わらず。しかしシーズン花はその前に観たものとほぼ同じ流れだったのに対し、風は諸々の設定ががらっと変わっていました。キャストに合わせて変えているところもあるのでしょうけれど、とにかく今回、歌が多かった。踊りも多かった。キャストが小劇場色強かったので、当然笑いの要素も多かったですが、締まるところはきちんと締まる、素晴らしいお芝居でした。

この辺からネタバレします。

このお話、蘭兵衛(森蘭丸)はもう、本当に全くの無駄死にをするわけです。この人本当に報われないのだけれど、それゆえ、この人が抱えていた信長に対する愛が、3人の中で一番湿度が高い感じがするのですね。
過去2回観ても印象の薄かった、地の男(捨之介)の信長へのスタンスが、今回はすんなり頭に入ってきた感じがします。地の男はいわゆる忍びなので、歴史の表舞台には出てこなかった。そのあたりで仁の男に蔑まれている。捨之介は色々なものを捨てようとして、捨てきれずに生きながら、かつての主であった信長への忠義を守るため、必死に戦っていたのですよねえ。
天魔王(仁の男)に関しては、なんかもうこじらせまくった信長愛をぶちまけてる印象。光秀そそのかしたのお前かよ!というびっくり事実よ。とことん狂った悪役ってのもよいですよねえ。もーほんとに最後までかっこよい天魔王でございました。

蘭丸は、信長に逃されて過去のことを振り切って、過去をなかったこととして、蘭兵衛と名を変えて生きてきたわけです。その中で極楽太夫と出会い、そこでも確かな絆を結んでいた。これが幸せだ、これこそが大切なんだ、と言い聞かせながらも心のなかにある過去は当然消えない。苦いですねぇ。
その心の傷みたいなものを、天魔王に付け込まれて呑まれてしまう、この辺の感じも花と鳥では表現が違いました。好みは鳥です。堕ちる事って抗いがたい魅力があるものですよね。あれは何なのでしょうね。
蘭兵衛はこの時点で死に、蘭丸として生き返る。そして、蘭兵衛として築き上げてきたものを全て壊しにかかります。
極楽太夫からしたらたまったもんじゃない話なのですが、この人は蘭兵衛を愛している。蘭丸ではなく。愛している人が絶対に堕ちてはいけないところに堕ちてしまって、しかも自分ではもう為す術がない。しかも自分の大切なものを根こそぎ奪われてしまう。たまんないですね。
さらに、天魔王が蘭兵衛に囁いたお話は、天魔王が蘭兵衛を自分側に引き寄せるための嘘だった、、、という。蘭丸の行動の大本にあるのは、信長への愛のみ。なのに、それに従ったと思ったら実は信長の意に背いていたという。ああもうかわいそう。ほんとうにかわいそう。

蘭兵衛のことばかり書いていますが、仕方がない。私がこのお話で一番好きなのが、この蘭兵衛にまつわるお話なのです。


生きることはそんなに楽しい事ではないです。生きるっていいね、の「いいね」の部分というのは、人生の要所要所にあるイイトコロなわけで、それ以外は結構しんどいことの方が多いです。けれど、楽しいとか幸せだーとかそういうものを強く感じるには、このくらいの割合でないとだめなのだろうとも思うわけです。

そして当然ですが、全てが自分の思い通りになるわけではない。むしろ思い通りに行くことのほうが少ないのです。そこに自分の行いや性質の良し悪しはあまり関係がない。世界は自分のためにあるわけではなく、誰のためにあるわけではなく、ただある。私達の持っているモラルとか良心とか、いいこととか悪いこととか、そういうのとは別のルールで世界は動いている。

欲しかったもの、失いたくなかったもの、どうしてもこれだけは譲れないと思っていたって、結構かんたんに失われたり奪われたりしてしまうものです。そうなった時、人はどう折り合いを付けるかというということ。諦めるということ。そして、妥協するということ。妥協とか諦めるという言葉にはネガティブな印象がつきまといがちですが、生きていくうえでは絶対に必要なものだと思っています。

諦めて、妥協をして、これでいいんだと、そこで前向きになる、でもたまに諦めきれない心が疼いたりして。このままでいたい、このままでは嫌だ、こういう矛盾するような気持ちが同時に心のなかにある事は、そんなに珍しいことではないですよね。
そういう、ままならぬ事、やりきれない事をこのお話の中で一身に引き受けていたのが蘭兵衛。
その蘭兵衛の生き様や死に様をうけて、捨之介はさらに前を向くのです。
やあ、本当に素晴らしい。3作品見たなかで、一番このあたりのテーマがしっくり来た公演でした。
おそらく、捨之介の年齢が高めなのもあるのでしょう。深みを増した捨之介。

若い捨之介も素晴らしかったのですけれどねw

できればもう一回くらい観ておきたいなあ、と思っていますが、どうなるかなあ。

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